オオムギの起源でわかったこと

日本で古くから栽培されているオオムギの起源は、1万年前に突然変異した種が中東から伝わった栽培種であることがDNA配列からわかったそうです。
岡山大学や農業生物資源研究所などの国際研究チームが 米国の科学誌に発表しました。
中東の遺跡の調査から2万3千年以上前に、この地方で野生種の実が食べられていることがわかっています。オオムギの野生種は実が成熟すると地面に落ちやすいのですが、成熟しても実がついたままの突然変異種を見つけて栽培を始めたのだそうです。そのため、1万年前のオオムギの栽培が農業の起源と考えられています。
日本には7千~8千年かけてラクダの背に揺られながらシルクロードを経由して伝わったといわれています。雑穀のルーツを探りながら、人々の農耕の起源や暮らしの文化が見えてくることに悠久のロマンを感じます。

健康を応援する雑穀たち

食品の機能性表示とともに「農作物」に対する期待も高まっています。
生活習慣病や認知症の予防に役立つ農作物の研究、開発に農林水産省が本腰を入れ始めているからです。
米やじゃがいも、みかんや緑茶などが研究の対象として選ばれ、それらの農作物に含まれる植物栄養素、βカロテンやβクリプトキサンチン、βグルカン、アントシアニンやカテキンなどのポリフェノール類、ビタミンB2、アミローズなど高機能栄養素の研究が進められています。でも最も注目されている農作物は雑穀の栄養素です。
キアヌやアマランサス、あわ、ひえ、きび、赤米、黒米、そばや押し麦などの多くに含まれるポリフェノールやカリウム、必須アミノ酸バランスなどの成分が高機能栄養素として世界的に注目されているのです。雑穀は健康自立に欠かせない食材となっています。

雑穀・宇宙へ行く!

宇宙食に「五穀玄米ごはん」が加わりそうです。宇宙航空研究開発機構では、宇宙日本食に新たな108品目の候補から、33品目を選んだなかに「五穀玄米ごはん」が入っているそうです。その他にさつまいもや焼きいも、おろしりんごやちりめん山椒、ようかんなども含まれています。宇宙食は国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する日本人宇宙飛行士に、栄養バランスの向上やストレス軽減などを目的に提供する食事です。
これまでに赤飯やラーメン、粉末緑茶など28品目が認証されていますが、保存期間や食感、食べやすさ、水分やカスが飛び散らないかなどの試験がされ認証されるのです。
クッキングをしなくてもいい宇宙食ですが、飛行士の健康維持に「五穀玄米ごはん」が加わり、噛めば噛むほど味が出る五穀玄米が活躍と思うと楽しいですね。
他の国の宇宙飛行士にも“おすそわけ”するのでしょうか。

「五穀米」から生まれる世界一の演奏

「ベルリン・フィル」と聞けば誰もが世界一のオーケストラだとわかりますが、この管弦楽団を率いる第一コンサートマスターが日本人の樫本大進さんです。さまざまの楽器を演奏する楽団員と指揮者の間にいて、一体となって音楽を構成する役割もあり互いに信頼し、尊敬しあう関係づくりに気を使う難しい仕事です。演奏会は夜が多く健康には充分注意をはらっているそうで、食事は奥様の和食中心の手料理で健康管理をされています。
樫本さんはカツ丼が好物だそうですが、奥様は健康のために「五穀米」でカツ丼を作られます。世界一のバイオリンの音色とベルリン・フィルの演奏は「五穀米カツ丼」で奏でられると思うと、なぜかワクワクします。
樫本さんは、1979年ロンドンで生まれ、3歳でバイオリンを始め、96年にロン・テイボー国際音楽コンクールで優勝し、2010年ベルリン・フィル第一コンサートマスターに就任された“世界の匠”ですね。

見直される雑穀の底力

機能性表示食品が注目され、食事が健康の素と再認識される時代「雑穀」に含まれる豊富な植物栄養素の機能と効用が見直されています。雑穀に含まれる「ポリフェノール」は、植物を紫外線から身を守る働きをするように人間にも同じ役割を担ってくれるのです。ポリフェノールには5,000種類以上あるのですが、雑穀の色素や苦み、渋みなどに多く含まれ強い抗酸化力とともに紫外線に負けない身体を作ってくれます。また、体内で合成できない「必須アミノ酸」を雑穀から摂取できることです。リジンやパリン、ロイシン等の9種類の必須アミノ酸が免疫力を高めてくれます。
そしてもう一つは、カリウムやナトリウム、鉄分や亜鉛などの豊富な「ミネラル成分」が体調を整えてくれる働きがあることです。
「雑穀」を代表するこれらの3つの成分が一緒に摂れることが注目されています。雑穀の底力はまだまだ未知数で、その可能性は広がりそうです。

400年前の遺言

北秋田市にある鷹巣町と比内町にまたがる森吉山の山麓にある、鍋を伏せた形の竜ケ森(1049m)がありますが、名前のように竜を神にまつる山で雨乞いの風習があり、そのため「竜ケ森」と呼ばれています。
今は、竜ケ森野外リクレーション場が開設され、上母木には天然秋田杉の風景林が「学術参考林」として設定され親しまれています。この豊かな国有林は、400年以上も前から守り続けられており秋田藩主の佐竹氏の命によりこの地に調査に入った団長の渋江内膳政光によって「秋田の豊かな林野と農業に藩政の基礎政策を置くべきである」と指摘し、渋江政光の「遺言」として残っています。
「国の宝は山なり。山の衰えは即ち国の衰えなり。百姓は国の宝なり。百姓衰ふときは国もまた衰ふなり」この渋谷の遺言を「竜ケ森」の名とともに400年も継承していると思うと「くまさん自然農園」も身が絞まります。

つぶつぶ雑穀酒

お酒はお米や麦、果物から造るイメージが強いのですが、古くは雑穀からも造られていますがご存知ですか。
日本ではアイヌ民族がピヤパと呼ぶ「ひえ」から“トノト”という儀式に欠かせない酒を造っています。ネパールでは「シコクビエ」を発酵させた“チャン”というつぶつぶ酒が飲まれていますし、中国では「高きび」を原料に“白乾・パイカル”が造られ「コーリャン」と呼ぶモロコシから“コーリャン酒”が造られています。日本でも20年程前から福島県で「高きび」から焼酎が造られ、毎年秋には“高きび祭り”が開催されています。
岩手県北上山地では「ひえ」で“どぶろく”を造り、疲労回復のために飲んでいます。
福島県では蕎麦を原料にした“蕎麦酒”、福岡県では「ごま」から“ごま焼酎”が造られていますが、全国にはまだまだ雑穀を原料にした地方色豊かな“つぶつぶ酒”があるのではないでしょうか。

“自然の日傘”と赤米・黒米

赤米や黒米が使われた色艶やかな五穀米、八穀米が人気ですが、秋田では「朝柴」と呼ばれる赤米が収穫されます。
こうした色素米は2000年以上前に中国から伝わり、生命力が強く薬効成分もあることから神様へのお供え物やお祝いごとに古くから使われていました。この赤米の色素は、赤ワインと同じポリフェノールの一種タンニンで、抗酸化作用の高い栄養素です。黒米の色素も同じポリフェノールですがブルーベリーと同じアントシアニン系で、滋養強壮に優れ薬膳料理にも使われます。
植物栄養で注目されるポリフェノールには「自然の日傘」とも呼ばれ、植物たちが紫外線から身を守るファイトケミカルで日傘のような役割をしているのです。トマトのリコピン、緑茶のカテキン、黒豆のアントシアニンも同じポリフェノールの仲間ですが雑穀の赤米や黒米にも多く含まれるポリフェノールが元気な体を作ってくれるのです。

卑弥呼とジョン・レノン

邪馬台国の女王・卑弥呼の時代、弥生人はある調査によると一回の食事で3900回以上噛んでいたそうです。
一方、ベジタリアンで世界に平和のメッセージを発信し続けたジョン・レノンは、一回の食事で1000回噛むことを心がけていたそうです。噛むことによって唾液を分泌し、唾液に含まれるでんぷん消化酵素が穀物や野菜をブドウ糖に変え口の中でおいしさを広げ、脳への刺激と同時に脳の働きに欠かせないブドウ糖を供給し、脳細胞を活性化します。
よく噛むことによって、唾液の分泌、あごの運動による脳への刺激と必要な栄養補給を迅速にし、脳の活性化によって体の働きを高める効果をもたらします。
特に“つぶつぶ雑穀”を食事に取り入れることによって噛む回数が増え、体内の臓器を始め脳の活性化を促し、健康長寿の礎となること間違いありません。
雑穀は、“健効の素”ですね。

秋田の食材で給食日本一に!

鷹巣の隣町、世界自然遺産で知られた白神山地の麓にある自然豊かな藤里町が、12月に開かれた全国47都道府県から2157の学校施設が応募した「全国学校給食甲子園」で、藤里町学校給食センターが優勝しました。
地元の食材を使って栄養価などを競う大会で、献立は「白神あきたこまち」で作ったきりたんぽに、地元産の味噌を付けて焼いた「みそつけたんぽ」や白神舞茸の「うどん汁」、「とんぶりあえ」、「枝豆のかわりがんも」や「やまぶどうゼリー」などで、嬉しい全国一に輝きました。
藤里町内の幼稚園や小中学校の280人分の給食を作るセンターの栄養教諭や調理員の皆さんが、地元産の食材にこだわり安心・安全を第一季節感や食文化学習にも目配りした献立での優勝です。
自然豊かな秋田ならではの優勝に、くまさん自然農園も嬉しく、給食にもっともっと雑穀を取り入れてほしいなあと思っています。