秋にみのる雑穀たちは、俳句の秋の季語として先人たちに詠まれています。
粟(あわ)では芭蕉や正岡子規、高浜虚子が詠んでいます。
よき家や雀よろこぶ背戸の粟 芭蕉
鳴子きれて粟の穂垂るるみのりかな 子規
山畑の、粟の稔りの、早きかな 虚子
稗(ひえ)の俳句では、
稗めしの中の稗つぶ冷めやすし 加藤知世子
稗抜くや月西国へゆくごとし 庄司圭吾
黍(きび)や唐黍(からきび)では蕪村や芥川龍之介も詠んでいます。
黍刈て檐(のき)の朝日の土間に入る 子規
古寺に唐黍を焚く暮日かな 蕪村
唐黍やほどろと枯るる日のにほい 芥川
俳人や小説家の日常に詠まれた雑穀たちの風景が活々と蘇ってきます。益々、一派一絡げに雑穀と呼べない気がします。食の歴史がもつ雑穀個々の文化を感じます。